「自然エネルギーでつくるこれから生活」勉強会のご報告


東日本大震災でご苦労をされている皆様に深くお見舞い申し上げます。

 震災以降、普段“あたりまえ“に生活を支えていたエネルギーに関心が高まり、様々な疑問や意見を伺う機会が増えました。
 ひまわりの種の会では、エネルギーのことを皆さんと一緒に学び、考える場として「自然エネルギーでつくるこれから生活」という勉強会をキャラバンで実施しているところです。
 本日は、その第3回目に講師いただきました北海道大学吉田文和先生の勉強会についてご報告します。

日時:平成23年8月22日(月)18:30~20:30
■内 容 <1部> 
      講演「3.11以降の日本の、北海道のエネルギーを考える」
      講師:吉田文和先生(北海道大学大学院経済学研究科教授)
      <2部> 
      トークセッション(質疑応答や意見交換)
      進行:岩井尚人さん(プロジェクトデザインセンター 専務理事)
     
      主催:NPO法人ひまわりの種の会
  共催:NPO法人環境活動コンソーシアムえこらぼ
       協力:東日本大震災市民支援ネットワーク・札幌 むすびば

【<1部>吉田文和先生のお話要約】
 はじめに原子力発電の仕組みと構造についてご説明。
 3.11以降の政策課題とは何かということで、事故の収束や電気の安定供給、補償、国民負担の最小化など、段階的に検討するべきことをお話された。
 原子力発電の発電コストは事故後のコストを入れると高くなるのでは、というお話を事例を元に解説いただいた。
現在わが国のエネルギーバランスから、今後のエネルギー・電力政策の見直しについて、原子力発電を含めてご説明された。ベースロードを環境負荷の少ないLNG,LPGへの転換と企業の自家発電を取り入れてはいかがと提示される。
 いずれにせよ40年後には現在の原子力発電所は廃炉に向かう。対策のひとつとして、省エネを推進し、ピークカットを検討するなどの方法がある。また、風力、太陽光、バイオマス、地熱、小水力等再生可能エネルギーの拡大と固定買取制度の運用を図るのが良いだろう。
 また、熱電供給という熱と電気の総合的な利用は効果的である。送電分離に関しては、新規の参入を促進して、国内電線網は抜本的再編を検討することが望まれる。
 海外では地球環境税の導入により、税収を社会保障費に当てるなどで雇用の促進に繋がる事例があり、効果的である。
 北海道においては原子量発電の依存度が高く、今後は省エネ、暖房対策、再生エネルギー拡大、熱電供給、天然ガス発電、都市と農村の連携を図る木質バイオマスなどを対策として検討していくことが大切になる。
 全体としては、短期、中期、長期の復興計画を立て、持続可能で安心して生活できる21世紀の日本と世界を目指す機会だと考える。

【<2部>トークセッション
 コーディネート:岩井尚人さん(プロジェクトデザインセンター 専務理事)】
 会場から吉田先生のお話に関して、質問用紙を配布。
カテゴリーは、原発事故・エネルギーのコスト・エネルギーバランス・エネルギー政策の方向性・再生可能エネルギー・温暖化対策・北海道における脱原発依存方向性・その他とした。
 以下、いただいた質問とそれに対する回答を記載します。
●の質問に回答。
→は吉田先生の回答

<原発事故>
○泊と福島第1の違いを教えてください。

<エネルギーのコスト>
○原発コストは他の火力、水力より高いことが明らかになり、また電源三法による補助金 もこれまではすべて原子力に使われているわけですから、北海道・北電のためを考える なら泊の対策をして生き延びさせるというのはおかしいと思います。すみやかな廃炉、 ガス発電への転換を進めるべきではないでしょうか?

<エネルギーバランス>
○多様な発電方法(種類)があった方がよいと思いますし、できるだけ分散させる必要が あると思うのですがどうでしょう?
○原発をすべて止まっても、既存の発電施設だけで問おうということをもっと強調すべき ではないでしょうか。

<エネルギー政策の方向性>
○経済的、技術的にあたりまえのことが進まないことへの静かな義憤を感じる。あたりま えのことがすすむためには「インセンティブ」が必要だと思いますが、それについては どうしたら良いと思いますか?政府や地方政府や電力会社、電力業界、財界などにイン センティブは与えられるのでしょうか?それとも見通しは暗いと思いますか?
○・現在可決されている再生可能エネルギー法案の問題点。
 ・説明の中で民生部分を減らしてエネルギーバランスを変えるとあったように思います  が、もう少しくわしく説明してください。
 ・大蔵省が本気でやる気でやったら、何ができると言ったのか聞き逃したので、もう一  度説明してください。
○都市のエネルギーを地方が供給している。都市内に自立型電源設置はいかがか?
●送電分離は海外ではすすんでいると聞きます。東電はまだしも、北電他の電力会社がす すんで送電分離をすすめるには何が必要でしょうか?
→欧州では国間でナショナルグリッドがある。日本は特殊。金融資本、経団連との調整が 必要。
 熱と電気を分離しているのはトータルでは無駄なこと。熱電供給は雇用につながる。補 助金を充当。

●エネルギーをテーマに対話を進める際、行政、電力会社をどうしたら参画させられると 思いますか?また、それは必要だと思いますか?(市民の声を届ける方が早くて有効な ど)
→市民の話し合う能力が育つと良い。日本が出直す良い機会。日本の競争力、成長の元に なる。民主主義の学校として構成員が当事者意識を持つと良い。
●電気料金値上げによる企業への影響をどう考えるか?
→電気料金値上げが国際競争力に関わるわけではなく、労働、市場コストが海外進出の理 由。
 しかしコスト負担には配慮が必要。市民との合意形成が必要。電気料金は微調整する制 度設計で対応。ドイツでは、再生可能エネルギーの電力全量買取の負担割合を、家庭が 高く、産業は低くして産業に配慮をしている。

<再生可能エネルギー>
○自然エネルギーとして「海」波力、海流、深水の温度差などでの発電は研究されている と思いますが、現段階で大きなエネルギー源として取り上げられないのは、
 ・技術・コスト的に無理
 ・まだ研究が不足
  どちらなのでしょうか?
○再生可能エネルギーの普及のためにエネルギー問題以外で重要な要素は何だと思います か?(例)まちづくりの視点

<温暖化対策>
○CO2削減とピークオイルの観点などから電気自動車(EV)が普及していますが、電気の 使用も減らしていく必要がある中で、EVの普及はどう考えたら良いでしょうか?
●安全性の問題や事故対応、放射性廃棄物の処理コストなどを考えますと脱原発の方向は 良く分かりましたが、これまで温暖化防止対策のうえで重要な役割を占めていたといわ れる原発推進の代わりに今後効果的な温暖化対策を進めるうえで大きなポイントは何で しょうか?
→原発=温暖化対策ではない。原発を導入しても20%電力使用量が増加。CO2対策は省 エネが有効。
●グリーン電力証書やカーボンオフセットについてはどのような見解をお持ちでしょう  か?
→国際的認証がされていない。制度の問題点があり、工夫に課題。
 都市と農村の連携には意味がある。制度調整をすると良い。

<北海道における脱原発依存方向性>
○電気に頼らない生活の提案が必要なのではないかと思うのですが?オール電化とか、ネ ットワークで不安定なエネルギーの有効利用とか言われていますがその方向性は違うの はないでしょうか?人口増しているのにずっと電化していくのは無理なのではないでし ょうか?
○北海道と札幌市の脱原発依存政策について
 ・再生可能エネルギー拡大のうちポテンシャルの高いもの
 ・都市と農村の連携/木質バイオマスについて具体的な中身をお聞かせ願いたい。
○このジャンルでもう少し詳しく教えてください。熱電供給?
○泊原発を休止して、他に代わるエネルギーを北海道で作り出していくにはどのようなエ ネルギーが適切とお考えでしょうか。
●現状の理解の国民のデジタル・デバイドがすさまじい。これをどう解消し、正しい状況 認識を持ってもらい、道民が未来の北海道を心ひとつにして考えていく状況をつくって いけるのだろうか。
→みんなが関心を持つ勉強会が必要。

<その他>
●電力問題については「送電ロス」について以前から問題視しており、最近のスマートグ リッド、スマートシティー、スマートハウス化は省エネ、ゼロエミッションに大変有効 だと思い、実行しています。官の政策も重要ですが、民、特に経済界の動きを加速させ ると早いと考えます。無論FITなどの制度も重要だと思いますが、この2者がうまくかみ 合う可能性はどうお考えですか?
→都市計画に自治体の権限がない。
 発電設備、ごみ処理場などは「迷惑施設」のイメージが定着している。都市には施設を モダンなデザインにするなどの工夫が必要。地域と時間をかけて話し合いをするべき。 自分たちのためには何が良いか、地域の人が一番良く知っているので地域特性に合う地 産地消電源を検討しては。地元がお金を出すなど参加をして、外の資金を入れるのが良 いのでは。